お尻のかゆみが、単独ではなく、「おりものの量の増加や変化」「陰部の強いかゆみ」といった症状と同時に現れている場合、その原因は皮膚だけの問題ではなく、婦人科系のトラブルが関わっている可能性が高いと考えられます。このような場合は、皮膚科で対症療法を受けるだけでなく、根本原因の治療のために「婦人科」の受診を検討することが非常に重要です。女性のお尻のかゆみの原因となる代表的な婦人科疾患が、「カンジダ腟炎」です。カンジダは、健康な女性の体にも存在する常在菌(カビの一種)ですが、疲労やストレス、抗生物質の使用、妊娠などで体の抵抗力が落ちると、異常増殖して腟炎を引き起こします。カンジダ腟炎の典型的な症状は、外陰部の耐え難いほどの強いかゆみと、酒かすやカッテージチーズ、ヨーグルトに例えられる、ポロポロとした白いおりものです。この強いかゆみは、腟や外陰部だけでなく、その周辺である肛門の周りや、お尻の割れ目にまで広がることが多く、これが「お尻のかゆみ」として自覚されるのです。この場合、お尻の皮膚にいくら塗り薬を塗っても、原因である腟内のカンジダを治療しない限り、かゆみは根本的には治まりません。婦人科では、おりものの検査でカンジダ菌の有無を確認し、腟内に直接挿入する「抗真菌薬の腟錠」や、外陰部に塗るクリームなどで治療します。また、おりものそのものが、かぶれの原因となることもあります。細菌性腟症などでおりものの量が増えたり、性状が変化したりすると、デリケートゾーンが常に湿った状態になり、皮膚がふやけてバリア機能が低下し、かぶれやかゆみを引き起こしやすくなります。これも、おりものの原因を治療することが根本解決に繋がります。さらに、40代後半以降の更年期の女性では、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって、外陰部や腟の粘膜が萎縮し、乾燥しやすくなります。この乾燥が、かゆみやヒリヒリ感を引き起こし、お尻にまで影響が及ぶこともあります。この場合は、ホルモン補充療法などが有効な選択肢となります。おりものの変化を伴うお尻のかゆみは、婦人科医への相談が不可欠です。