マイコプラズマ肺炎と聞くと、子供たちが学校などで集団感染する病気というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、この病気は決して子供だけのものではなく、大人が感染すると、しばしば重症化し、長引くつらい症状に悩まされることがあります。その正体と特徴を正しく理解しておくことは、早期発見と適切な治療のために非常に重要です。マイコプラズマ肺炎の原因となる「マイコプラズマ・ニューモニエ」は、細菌とウイルスの中間に位置するような、少し特殊な微生物です。細菌のように自己増殖できますが、細胞壁を持たないという、ウイルスに似た特徴も併せ持っています。この「細胞壁がない」という性質が、治療を難しくする一因ともなっています。大人がマイコプラズマ肺炎にかかった場合、その症状は典型的な肺炎とは少し異なる経過をたどることが多く、「非定型肺炎」に分類されます。主な症状は、まず発熱と全身の倦怠感、頭痛などから始まります。ここまでは、ごく普通の風邪と何ら変わりありません。しかし、数日遅れて、乾いたコンコンという咳が出始め、これが日に日に悪化していくのが大きな特徴です。痰の絡まない、しつこい乾いた咳が、夜も眠れないほど激しく続くことも珍しくありません。熱は微熱程度で済むこともあれば、三十九度を超える高熱が続くこともあり、個人差が大きいのが実情です。一般的な肺炎でよく見られるような、胸の痛みや呼吸困難感は比較的少ないとされていますが、その分、診断が遅れ、「ただの長引く風邪」や「しつこい気管支炎」として見過ごされてしまうケースが後を絶ちません。大人がこの病気にかかると、子供よりも体力の消耗が激しく、社会生活への影響も大きくなります。たかが咳と侮らず、特に頑固な乾いた咳が二週間以上も続くような場合は、マイコプラズマ肺炎の可能性を疑い、呼吸器内科などの専門医を受診することが賢明です。