お腹の痛みと共に、下痢(特に水のような便)、吐き気、嘔吐、そして発熱といった症状が同時に現れた場合、その原因として最も考えられるのが「感染性胃腸炎」です。これは、ウイルスや細菌などの病原体が、飲食物や手指を介して口から体内に入り、胃や腸の粘膜に感染して炎症を起こす病気です。一般的に「お腹の風邪」や「食中毒」と呼ばれるものがこれにあたります。感染性胃腸炎が疑われる場合、受診すべき診療科は、大人は「内科」または「消化器内科」、子どもは「小児科」です。冬場に流行するのが、ノロウイルスやロタウイルスといった「ウイルス性胃腸炎」です。感染力が非常に強く、学校や家庭内などで集団発生しやすいのが特徴です。突然の激しい嘔吐で始まり、その後、水のような下痢が続くのが典型的なパターンです。一方、夏場に多いのが、サルモネラ菌やカンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O-157など)といった「細菌性胃腸炎(食中毒)」です。加熱不十分な肉や卵、生の魚介類などが原因となり、ウイルス性と比べて、腹痛がより激しかったり、高熱が出たり、便に血が混じったり(血便)することが多いのが特徴です。治療の基本は、原因がウイルスであれ細菌であれ、下痢や嘔吐によって失われた水分と電解質を補給する「水分補給」です。脱水症状を防ぐことが何よりも重要で、そのためには、水分と塩分、糖分がバランス良く配合された「経口補水液」を、少量ずつ、こまめに摂取するのが最も効果的です。食事は、症状が落ち着くまでは無理に摂らず、胃腸を休ませることが大切です。自己判断で強い下痢止めを服用するのは、病原体の排出を妨げ、回復を遅らせる可能性があるため、原則として避けるべきです。ほとんどの場合は、これらの対症療法で数日以内に回復しますが、嘔吐が激しくて水分が全く摂れない、高熱が続く、血便が出るといった場合は、点滴や抗生物質による治療が必要となることがあるため、必ず医療機関を受診してください。