これまで述べてきた代表的な病気の他にも、足のしびれを引き起こす原因は数多く存在します。中には、見過ごされがちですが、治療可能なものや、全身の状態を反映している重要なサインであるものも含まれています。例えば、「ビタミン欠乏症」もその一つです。特に、神経の機能を正常に保つために不可欠な「ビタミンB12」が不足すると、手足の末端にしびれや感覚障害が生じることがあります。ビタミンB12は、主に動物性食品に含まれているため、厳格な菜食主義者(ヴィーガン)や、胃を切除した人、あるいは高齢者などで吸収不良が起こりやすいとされています。この場合は、「内科」で血液検査を行い、ビタミンB12を補充することで症状の改善が期待できます。また、「アルコールの過剰摂取」も、末梢神経に直接的なダメージを与える(アルコール性ニューロパチー)原因となります。長年にわたる多量の飲酒習慣がある人で、足の裏のしびれや痛みが現れた場合は、これを疑う必要があります。治療の基本は、何よりもまず「禁酒」であり、これも内科医の指導のもとで行われます。さらに、甲状腺ホルモンの分泌が低下する「甲状腺機能低下症」では、全身の代謝が低下し、むくみ(粘液水腫)が神経を圧迫することで、手足にしびれが生じることがあります。倦怠感や冷え、体重増加といった他の症状と共にしびれを感じる場合は、「内分泌内科」での検査が必要です。精神的なストレスや不安が、体の感覚を過敏にさせ、はっきりとした原因がないにもかかわらず、しびれとして感じられる「心因性」の症状もあります。この場合は、「心療内科」が相談の窓口となります。その他、特定の抗がん剤などの「薬剤の副作用」として、末梢神経障害が現れることもあります。もし、新しい薬を飲み始めてからしびれが出現した場合は、その薬を処方した主治医に必ず相談してください。このように、足のしびれは、生活習慣や内分泌、精神的な状態まで、実に様々な要因を反映しています。一つの可能性に固執せず、幅広い視点で原因を探ってくれる、かかりつけの内科医などにまずは相談することも、解決への近道となるでしょう。