しばらく歩くと、ふくらはぎや太ももが重くなって痛み、しびれも出てきて歩けなくなる。しかし、数分間休むと症状が和らぎ、また歩けるようになる。このような症状は、腰部脊柱管狭窄症の「間欠性跛行」と非常によく似ていますが、実は足の「血管」が原因で起こっている可能性があります。その代表的な病気が「閉塞性動脈硬化症(ASO)」です。この病気は、動脈硬化によって、足へ血液を送る動脈が狭くなったり、詰まったりすることで、足の組織に必要な酸素や栄養が十分に行き渡らなくなる血流障害です。この病気を専門に診断・治療するのは、「循環器内科」または「血管外科」となります。閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行は、腰が原因のものとは異なり、前かがみになって休んでも症状は改善しません。立ち止まって、足の筋肉への酸素需要が減るのを待つことで、初めて痛みが和らぎます。また、血流障害が原因であるため、しびれや痛みに加えて、「足の冷たさ(冷感)」や、「足の色が悪くなる(蒼白、紫色)」といった症状を伴うのが特徴です。病状が進行すると、安静にしていても足が痛んだり、足の指に治りにくい潰瘍や壊疽(えそ)ができてしまったりすることもあり、最悪の場合は足を切断しなければならないこともあります。この病気は、高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病や、喫煙習慣のある人に多く見られます。診断のためには、まず両腕と両足首の血圧を同時に測定し、その比率を調べる「ABI(足関節上腕血圧比)検査」が行われます。これは、体に負担の少ない簡単な検査で、足の血流障害の有無を客観的に評価できます。さらに、超音波検査やCT、血管造影検査などで、どの血管が、どの程度詰まっているのかを詳しく調べます。治療は、まず禁煙と、原因となる生活習慣病の管理が基本となります。そして、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)や、血管を広げて血流を改善する薬による薬物療法が行われます。これらの治療で改善しない場合は、カテーテルを用いて狭くなった血管を風船やステントで広げる「血管内治療」や、人工血管を使って詰まった部分を迂回させる「バイパス手術」といった、より専門的な治療が必要となります。歩行時の足のしびれや痛みに、「冷たさ」が伴う場合は、血管の専門医への相談が重要です。