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もう悩まない!ワキガの臭いを相談できる専門治療
セルフケアを毎日頑張っているけれど、それでもワキガの臭いが気になってしまう。あるいは、臭いのことで精神的に深く悩み、日常生活に支障が出ている。そんな時は、一人で抱え込まずに、専門の医療機関で治療を受けるという選択肢があることを知ってください。ワキガ治療は近年大きく進歩しており、様々な方法で臭いの悩みを根本から解決することが可能です。ワキガの相談ができる主な診療科は、皮膚科、形成外科、美容外科(美容皮膚科)です。まず、皮膚科では、医療用の強力な制汗剤(塩化アルミニウム溶液など)の処方や、アポクリン汗腺の働きを一時的に抑える「ボトックス注射」などの治療が受けられます。ボトックス注射は、メスを使わずに注射だけで汗と臭いを抑えることができるため、手軽な治療法として人気ですが、効果は半年程度で、継続して治療を受ける必要があります。より根本的な治療を考えるなら、形成外科や美容外科が専門となります。近年注目されているのが、「ミラドライ」に代表される、マイクロ波を用いた切らない治療法です。これは、皮膚の上からマイクロ波を照射し、その熱で汗腺を破壊するというものです。皮膚を切開しないため、傷跡が残らず、ダウンタイムも短いのが大きなメリットです。ただし、自由診療のため費用は高額になります。そして、最も確実な効果が期待できるのが、手術による治療です。古くから行われている「剪除法(せんじょほう)」は、脇の下の皮膚を数センチ切開し、医師が目で直接確認しながら、臭いの原因となるアポクrint汗腺を一つ一つ丁寧に取り除いていく方法です。効果は半永久的ですが、術後の安静期間が必要で、傷跡が残るというデメリットもあります。どの治療法が最適かは、その人の症状の重さやライフスタイル、予算などによって異なります。まずは勇気を出して、専門のクリニックでカウンセリングを受けてみましょう。医師に自分の悩みを相談し、それぞれの治療法のメリット・デメリットについて詳しい説明を聞くことで、あなたにとって最善の道がきっと見つかるはずです。
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ストレスが原因?過敏性腸症候群と機能性ディスペプシア
腹痛で病院に行き、胃カメラや大腸カメラ、超音波検査など、一通りの検査をしても、「特に異常はありません」と言われる。しかし、実際には、お腹の痛みや不快な症状が慢性的に続いている。このような、明らかな器質的な病変が見つからないにもかかわらず、腹部の症状に悩まされる状態は、「機能性消化管疾患」と呼ばれ、その背景には「ストレス」や「自律神経の乱れ」が深く関わっていると考えられています。この代表的な病気が、「過敏性腸症候群(IBS)」と「機能性ディスペプシア(FD)」です。これらの病気の診断と治療は、「消化器内科」や「胃腸科」、そして時には「心療内科」が専門となります。「過敏性腸症候群(IBS)」は、主に腸の機能異常によって起こります。ストレスを感じると、脳と腸が相互に影響し合う「脳腸相関」というメカニズムを介して、腸が知覚過敏になったり、運動異常を起こしたりします。その結果、腹痛と共に、下痢や便秘、あるいはその両方を交互に繰り返すといった、排便に関する異常が生じます。特に、通勤電車の中や大事な会議の前など、特定の状況下で症状が悪化しやすいのが特徴です。「機能性ディスペプシア(FD)」は、主に胃の機能異常が原因です。胃の運動機能が低下し、食べたものがいつまでも胃の中に留まってしまったり(胃もたれ)、胃が十分に膨らむことができなかったり(早期飽満感)、あるいは胃酸などに対して胃の粘膜が過敏になったりすることで、みぞおちの痛みや、食後の胃の張り、焼けるような感じといった、つらい症状を引き起こします。これらの病気の治療は、まず生活習慣の見直しから始まります。十分な睡眠、適度な運動、バランスの取れた食事を心がけ、ストレスの原因を特定し、それを上手に回避・解消する方法を見つけることが基本です。薬物療法としては、IBSでは腸の動きを整える薬や、新しい作用機序の治療薬が、FDでは胃の動きを改善する薬や、胃酸の分泌を抑える薬などが用いられます。また、症状の背景に強い不安や抑うつがある場合には、抗不安薬や抗うつ薬が、腹痛や不快感を和らげるのに非常に効果的な場合があります。検査で異常がないからといって、気のせいではありません。つらい症状に悩んでいる場合は、機能性の病気に詳しい専門医に相談することが、生活の質を取り戻すための重要な一歩となります。
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子供の舌が赤い!イチゴ舌の基本的な見分け方
子供が熱を出し、ふと口の中を覗いた時に、舌がいつもと違う様子だと親としては心配になるものです。特に、舌が赤くブツブツしていて、まるで苺の表面のように見える「イチゴ舌」は、いくつかの病気のサインである可能性があり、その見分け方を知っておくことは非常に重要です。まず、イチゴ舌の最も基本的な特徴を理解しましょう。その名の通り、舌の表面が赤くなり、味を感じるための「舌乳頭(ぜつにゅうとう)」という小さな突起が炎症を起こして腫れ、ブツブツと際立って見える状態を指します。熟した苺の見た目にそっくりなことから、この名前が付きました。見分ける際の最初のポイントは、舌の変化の経過です。病気の種類によっては、初期段階では舌全体が白い苔のようなもので覆われ、その中から赤いブツブツが透けて見えることがあります。これを「白苔舌(はくたいぜつ)」と呼びます。その後、数日経つと白い苔が剥がれ落ち、舌全体が真っ赤に腫れた典型的なイチゴ舌へと変化します。この時間的な変化も、見分け方の一つの手がかりとなります。次に、舌以外の症状に注目することが不可欠です。イチゴ舌は単独で現れることは稀で、必ず何かしらの全身症状を伴います。例えば、高熱や喉の強い痛み、全身の細かい発疹などです。これらの随伴症状を総合的に観察することで、イチゴ舌の原因となっている病気を推測することができます。具体的には、高熱と喉の痛みが主であれば溶連菌感染症、五日以上続く高熱に加えて目の充血や手足の腫れがあれば川崎病、といったように、他の症状との組み合わせが診断の鍵を握るのです。子供の舌に異常を見つけたら、まずは慌てずに舌の状態と全身の症状を注意深く観察し、その情報を正確に医師に伝えることが、適切な診断と治療への第一歩となります。
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まさか私が無呼吸症候群だなんて
営業職として働く私は、昔から自分のことを健康で体力には自信がある方だと思っていました。しかし、三十代後半に差し掛かった頃から、妻に「あなたのいびき、最近すごくうるさいよ。時々、息が止まってて心配になる」と言われるようになりました。最初は「疲れているだけだよ」と笑って受け流していましたが、指摘される頻度は日に日に増していきました。自分では全く自覚がなかったのですが、異変は日中の活動に現れ始めました。一番堪えたのは、午後の会議です。どれだけ気合を入れて臨んでも、上司の話が始まると、まるで抵抗できない魔法にかけられたように瞼が重くなり、数分間の記憶が飛んでしまうのです。ハッと我に返った時の、同僚からの冷ややかな視線が忘れられません。車の運転中にも、信号待ちで一瞬意識が遠のき、クラクションで我に返るという危険な経験もしました。これはさすがにまずい。そう思い、意を決してインターネットで症状を検索し、「睡眠時無呼吸症候群」という病名に行き着きました。そして、専門のクリニックの扉を叩いたのです。クリニックでは、まず自宅でできる簡易検査を受けました。手首や指にセンサーを付けて一晩眠るだけの簡単な検査でしたが、結果は衝撃的なものでした。一時間あたりに呼吸が止まったり浅くなったりする回数が、重症の基準をはるかに超えていたのです。医師から「このままでは心臓や血管に大きな負担がかかり続けます」と告げられ、私はCPAP(シーパップ)療法という治療を始めることになりました。鼻にマスクを装着し、機械で圧力をかけた空気を送り込んで、気道が塞がるのを防ぐというものです。正直、マスクをつけて眠ることに抵抗がありましたが、その効果は絶大でした。治療を始めたその翌朝、私はここ数年感じたことのないほどの爽快な目覚めを経験したのです。頭がすっきりとし、体も軽い。そして、あれほど私を悩ませていた日中の眠気が嘘のように消え去りました。今では、CPAPは私の命の恩人であり、毎晩の欠かせないパートナーです。
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女性特有の下腹部痛、婦人科を受診すべきサイン
女性が「お腹が痛い」と感じる時、特に下腹部に痛みがある場合は、消化器系の病気だけでなく、子宮や卵巣といった女性特有の臓器のトラブルが原因である可能性を常に考える必要があります。これらの病気は、見逃すと不妊の原因になったり、緊急手術が必要になったりすることもあるため、適切なタイミングで「婦人科」を受診することが非常に重要です。婦人科を受診すべき腹痛には、いくつかの特徴的なサインがあります。まず、痛みが「月経周期と連動している」場合です。生理の時に、日常生活に支障をきたすほどの強い下腹部痛や腰痛がある場合は、「月経困難症」と呼ばれます。その背景には、子宮の収縮を引き起こす物質の過剰分泌だけでなく、「子宮内膜症」や「子宮筋腫」、「子宮腺筋症」といった病気が隠れていることがあります。特に、子宮内膜症は、年々生理痛がひどくなる、生理期間以外にも下腹部痛や腰痛、排便痛があるといった症状が特徴です。次に、「不正出血」や「おりものの異常」を伴う腹痛です。排卵期や月経時以外に性器から出血がある場合や、おりものの量が増えたり、色や臭いがいつもと違う場合は、子宮や腟に何らかの炎症が起きている可能性があります。クラミジアなどの性感染症が原因で、骨盤内の臓小器に炎症が広がる「骨盤内炎症性疾患(PID)」は、下腹部痛と発熱を引き起こします。そして、最も注意が必要なのが、「突然発症する、これまでに経験したことのないような激しい下腹部痛」です。これは、婦人科領域の緊急疾患のサインかもしれません。例えば、「卵巣嚢腫の茎捻転」は、卵巣にできた袋状の腫瘍が、その根元でねじれてしまう病気で、血流が途絶えるために激痛と吐き気を引き起こします。また、「子宮外妊娠の破裂」は、受精卵が子宮以外の場所(主に卵管)に着床し、それが大きくなって破裂するもので、激しい腹痛と共に、腹腔内で大出血を起こし、ショック状態に陥る、命に関わる非常に危険な状態です。これらのように、月経との関連性や、出血・おりものの異常、そして突然の激痛といった症状を伴う腹痛は、婦人科医による専門的な診断が不可欠です。我慢せずに、早期に婦人科を受診してください。
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時系列で見るイチゴ舌!症状の変化で見分ける
イチゴ舌を見分ける上で、その瞬間の見た目だけでなく、時間とともに症状がどう変化していくかを観察することは、非常に重要な手がかりとなります。病気によって、イチゴ舌が現れるタイミングやその前後の変化に特徴があるからです。まず、溶連菌感染症の場合を見てみましょう。発症初期、つまり高熱や喉の痛みが出始めてから一日目か二日目には、舌の表面全体が白い苔で覆われたようになります。これが「白苔舌」です。よく見ると、この白い苔の間から、赤く腫れた舌乳頭がポツポツと透けて見えます。そして、発症から三日目から四日目にかけて、この白い苔が徐々に剥がれ落ちていきます。その結果、舌全体が真っ赤になり、腫れた舌乳頭が際立つ、典型的な「いちご舌」の状態が完成します。この「白から赤へ」というドラマチックな変化が、溶連菌感染症によるイチゴ舌の大きな特徴です。一方、川崎病の場合は、このようなはっきりとした白苔舌の時期を経ずに、発症初期から舌全体が真っ赤に腫れ上がり、ブツブツが目立つイチゴ舌の状態になることが多いとされています。つまり、高熱が出てから比較的早い段階で、完成形のイチゴ舌が見られる傾向があります。この時系列での見分け方は、あくまで一般的な傾向であり、個人差もあります。しかし、親が「昨日見た時は白っぽかったのに、今日は真っ赤になっている」というような変化に気づくことができれば、それは医師にとって非常に価値のある情報となります。受診する際には、「いつから舌に変化が見られ、どのように変わってきたか」を具体的に伝えるようにしましょう。舌の見た目という「点」の情報だけでなく、その変化という「線」の情報を加えることで、より正確な診断に近づくことができるのです。
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下着やナプキンのかぶれ、接触皮膚炎の対策とセルフケア
女性のお尻のかゆみの原因として、日常生活の中で最も頻繁に遭遇するのが、下着や生理用ナプキンなどが原因で起こる「接触皮膚炎」、いわゆる「かぶれ」です。デリケートな部分だからこそ、日々のセルフケアと原因の特定が、つらいかゆみを改善し、再発を防ぐための鍵となります。かぶれの原因となる物質は様々です。まず「下着」では、ナイロンやポリエステルといった化学繊維や、装飾に使われるレース、あるいはウエストや足の付け根のゴム部分の締め付けが、摩擦や刺激、アレルギー反応を引き起こします。次に「生理用ナプキン」や「おりものシート」は、経血やおりものを吸収するための素材(高分子吸収体など)や、ムレを防ぐための化学物質、香料などが原因となり得ます。また、経血やおりもの自体が、長時間皮膚に付着することで、強い刺激となってかゆみを引き起こします。この他、「石鹸やボディソープ」「お尻を拭くためのウェットシート」に含まれる香料や防腐剤、「トイレットペーパー」の摩擦やインクなども、原因となる可能性があります。かゆみや赤みといった症状が現れた時に、まず行うべきセルフケアは、原因と思われる物質を特定し、それを「避ける」ことです。下着は、通気性と吸湿性に優れた綿100%のものに変えてみましょう。生理中は、ナプキンを2~3時間おきにこまめに取り替え、デリケートゾーンを清潔で乾いた状態に保つことが非常に重要です。体を洗う際は、洗浄力の強すぎる石鹸は避け、弱酸性で低刺激の洗浄剤を使い、手で優しくなでるように洗い、ゴシゴシこすらないようにします。そして、最も大切なのが「掻かない」ことです。掻き壊してしまうと、皮膚のバリア機能がさらに破壊され、炎症が悪化し、二次的な細菌感染を起こしたり、色素沈着が残ったりする原因となります。どうしてもかゆみが我慢できない場合は、冷たいタオルなどで短時間冷やすと、一時的にかゆみが和らぐことがあります。市販のかゆみ止めを使う場合は、ステロイドの入っていない、非ステロイド系のものから試すのが無難です。ただし、セルフケアで数日間たっても改善しない、あるいは悪化する場合は、迷わず「皮膚科」を受診してください。
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赤いブツブツと激しいかゆみ、毛嚢炎やニキビの可能性
お尻の皮膚に、ニキビのような赤いブツブツができて、かゆみや、時には痛みを伴う。多くの女性が経験するこの「お尻ニキビ」ですが、その正体の多くは、顔にできる思春期ニキビとは少し異なり、「毛嚢炎(もうのうえん)」、または「毛包炎(もうほうえん)」と呼ばれる皮膚の感染症です。この場合、治療の専門となる診療科は「皮膚科」です。毛嚢炎は、毛穴の奥にある、毛根を包んでいる「毛包」という部分に、細菌が入り込んで炎症を起こす病気です。主な原因菌は、私たちの皮膚に普段から存在する常在菌である「黄色ブドウ球菌」です。お尻は、長時間座っていることで椅子との間で圧迫され、汗や皮脂がたまって蒸れやすい部位です。また、下着による摩擦も絶えず加わります。このような高温多湿で、刺激の多い環境は、皮膚のバリア機能を低下させ、毛穴から細菌が侵入しやすくなる、まさに毛嚢炎にとって好都合な条件が揃っているのです。特に、夏場や、通気性の悪い下着(ガードルや化学繊維のタイツなど)を長時間着用していると、発症しやすくなります。症状は、毛穴に一致した赤いブツブツとして現れ、中心に小さな膿の点(膿疱)が見られることもあります。通常はかゆみを伴い、炎症が強いと、押すと痛むこともあります。これを自分で潰してしまうと、細菌が周囲に広がり、症状が悪化したり、色素沈着やクレーターのような跡が残ってしまったりする原因になるため、絶対に避けるべきです。皮膚科では、視診で毛嚢炎の診断を下します。治療は、主に「抗生物質」が用いられます。症状が軽い場合は、抗生物質を含む塗り薬(外用薬)が処方されます。広範囲に広がっていたり、炎症が強かったりする場合には、抗生物質の内服薬が必要となることもあります。日常生活での予防策も非常に重要です。通気性と吸湿性に優れた綿素材の下着を選び、締め付けの強い衣類は避けるようにしましょう。汗をかいたら、こまめにシャワーを浴びたり、ウェットシートで拭き取ったりして、お尻を清潔で乾いた状態に保つことが、再発を防ぐための鍵となります。
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突然の片側性のしびれは脳卒中を疑い脳神経外科へ
足のしびれの中には、一刻の猶予も許されない、命に関わる非常に危険なものがあります。それは、脳の血管が詰まったり破れたりすることで起こる「脳卒中(脳梗塞・脳出血)」のサインとしてのしびれです。このような脳に起因するしびれを疑い、直ちに「脳神経外科」または「脳神経内科」のある救急病院を受診すべき危険な兆候を知っておくことは、自分自身や家族の命を守る上で極めて重要です。脳卒中によるしびれの最も大きな特徴は、その「突然の発症」と「片側性」です。腰が原因のしびれが徐々に現れることが多いのに対し、脳卒中によるしびれは、ある瞬間、本当に突然に現れます。そして、体の右半身、あるいは左半身というように、片側の手と足が同時にしびれることが多いのです。「突然、右足と右手の感覚がなくなった」「左半身がジンジンしびれ始めた」といった場合は、強く脳卒中を疑う必要があります。そして、最も重要なのが、しびれ以外の「神経症状」を伴っているかどうかです。脳は、体の動きや感覚、言語など、あらゆる機能を司る司令塔です。そのため、脳細胞がダメージを受けると、しびれだけでなく、様々な神経症状が同時に現れます。アメリカ脳卒中協会などが提唱する「FAST」という標語は、これらのサインを覚えるのに役立ちます。F (Face):顔の麻痺。「イーッ」と笑った時に、片方の口角が下がって顔が歪む。A (Arm):腕の麻痺。両腕を前に上げた時に、片方の腕だけが力なく下がってくる。S (Speech):言葉の障害。「今日は天気が良い」といった簡単な文章が、ろれつが回らずうまく言えない、あるいは言葉そのものが出てこない。T (Time):発症時刻。これらの症状が一つでも見られたら、発症時刻を確認し、ためらわずに直ちに救急車を呼ぶ必要があります。脳卒中の治療、特に脳梗塞の治療は、時間との勝負です。発症から数時間以内に血栓を溶かす薬(t-PA)の投与や、カテーテルによる血栓回収術といった専門的な治療を開始できれば、後遺症を大幅に軽減できる可能性があります。足のしびれに、これらの「FAST」の症状が伴う場合は、絶対に様子を見ず、救急要請をしてください。
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軽い症状でもインフルエンザはうつるのか
「予防接種のおかげで、インフルエンザにかかったけど、熱も大して出ずに症状は軽かった。これなら、他の人にうつす心配も少ないだろう」。このように考える人がいるかもしれませんが、それは大きな誤解です。結論から言うと、たとえワクチン接種によって症状が軽く抑えられていたとしても、インフルエンザに感染している限り、体内で増殖したウイルスを体外に排出しており、周囲の人々への感染源となる可能性は十分にあります。症状の軽さと、他者への感染力は、必ずしも比例しないという事実を、私たちは正しく理解しておく必要があります。インフルエンザウイルスは、主に感染者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散る飛沫(ひまつ)に含まれて排出されます。予防接種を受けている人の体では、免疫システムが活発に働き、ウイルスの増殖をある程度は抑制します。そのため、非接種者に比べると、体外へ排出されるウイルスの量は少なくなる傾向がある、という研究報告もあります。しかし、ウイルス量がゼロになるわけでは決してありません。症状が軽いということは、高熱や倦怠感で寝込んでしまうことがなく、普段通りに活動できてしまうことを意味します。これが、感染拡大の観点からは、かえって厄介な問題となるのです。症状が重ければ、本人は外出を控え、自宅で療養するため、結果的に他者との接触機会は限られます。しかし、症状が軽いと、本人はインフルエンザだと気づかずに、あるいは「この程度なら大丈夫だろう」と考え、通勤、通学、買い物など、普段通りの社会生活を続けてしまいがちです。その結果、無意識のうちにウイルスを広範囲にまき散らし、「サイレント・スプレッダー(静かなる感染拡大者)」として、多くの人に感染を広げてしまう危険性があるのです。学校保健安全法では、インフルエンザは「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」を、出席停止期間と定めています。この基準は、症状の軽重にかかわらず、全てのインフルエンザ患者に適用されます。たとえ症状が軽く、元気になったように感じても、この期間は自宅で安静にし、他者との接触を避けることが、社会の一員としての重要な責任です。予防接種は、自分を守る強力な盾であると同時に、その効果を過信せず、周囲への配慮を忘れないという姿勢が求められます。