イチゴ舌を見分ける上で、その瞬間の見た目だけでなく、時間とともに症状がどう変化していくかを観察することは、非常に重要な手がかりとなります。病気によって、イチゴ舌が現れるタイミングやその前後の変化に特徴があるからです。まず、溶連菌感染症の場合を見てみましょう。発症初期、つまり高熱や喉の痛みが出始めてから一日目か二日目には、舌の表面全体が白い苔で覆われたようになります。これが「白苔舌」です。よく見ると、この白い苔の間から、赤く腫れた舌乳頭がポツポツと透けて見えます。そして、発症から三日目から四日目にかけて、この白い苔が徐々に剥がれ落ちていきます。その結果、舌全体が真っ赤になり、腫れた舌乳頭が際立つ、典型的な「いちご舌」の状態が完成します。この「白から赤へ」というドラマチックな変化が、溶連菌感染症によるイチゴ舌の大きな特徴です。一方、川崎病の場合は、このようなはっきりとした白苔舌の時期を経ずに、発症初期から舌全体が真っ赤に腫れ上がり、ブツブツが目立つイチゴ舌の状態になることが多いとされています。つまり、高熱が出てから比較的早い段階で、完成形のイチゴ舌が見られる傾向があります。この時系列での見分け方は、あくまで一般的な傾向であり、個人差もあります。しかし、親が「昨日見た時は白っぽかったのに、今日は真っ赤になっている」というような変化に気づくことができれば、それは医師にとって非常に価値のある情報となります。受診する際には、「いつから舌に変化が見られ、どのように変わってきたか」を具体的に伝えるようにしましょう。舌の見た目という「点」の情報だけでなく、その変化という「線」の情報を加えることで、より正確な診断に近づくことができるのです。