「もしかして自分はワキガかもしれない」と感じた時、多くの人がまず気になるのは、その特有の臭いの正体ではないでしょうか。ワキガの臭いは、単なる汗臭さとは根本的にメカニズムが異なります。その違いを正しく理解することが、適切なケアへの第一歩となります。私たちの体には、「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」という二種類の汗腺があります。私たちが暑い時や運動した時にかくサラサラとした汗は、エクリン汗腺から分泌されるもので、その成分のほとんどは水分です。そのため、かいた直後はほぼ無臭です。時間が経ってから臭うのは、皮膚の表面にいる常在菌が、汗に含まれる皮脂や垢を分解することで発生する、いわゆる「汗臭」です。一方、ワキガの臭いの主な原因となるのが、アポクリン汗腺です。この汗腺は、脇の下や陰部、耳の中など、体の限られた場所にしか存在しません。そして、アポクリン汗腺から出る汗には、水分だけでなく、脂質やタンパク質、アンモニアといった、臭いの元となる成分が豊富に含まれています。この汗そのものは、分泌された直後はやはり無臭です。しかし、この栄養豊富な汗を、皮膚の常在菌、特にワキガの原因菌とされるコリネバクテリウムなどが分解することで、あの特有の鼻をつく臭いが発生するのです。つまり、ワキガの臭いは、「アポクリン汗腺から出る汗」「皮脂」「皮膚の常在菌」という三つの要素が掛け合わさって生まれる、複雑な臭いなのです。その臭いは、よく「玉ねぎのようなツンとした臭い」「スパイスのような刺激臭」「鉛筆の芯や古びた金属のような臭い」などと表現されますが、個人差が大きく、一概には言えません。ワキガは病気ではなく、あくまで個人の体質の一つです。その特有の臭いのメカニズムを客観的に知ることで、いたずらに不安になるのではなく、冷静に自分の体と向き合うことができるようになるでしょう。
ワキガの臭いの正体とは!普通の汗と何が違うのか