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  • 予防接種最大のメリットは重症化を防ぐこと

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    インフルエンザの予防接種について語られる時、「発症予防率」という数字がよく注目されます。しかし、ワクチン接種の本当の価値、そして最大のメリットは、数字に現れにくい「重症化予防効果」にこそあると言っても過言ではありません。インフルエンザという病気の本当に恐ろしい点は、数日間の高熱や関節痛といったつらい症状そのものではなく、その先に待ち受ける可能性のある「重症化」と、命に関わる「合併症」です。特に、高齢者や乳幼児、そして心臓病、呼吸器疾患、糖尿病、腎臓病といった基礎疾患を持つ人々にとっては、インフルエンザは、文字通り命を脅かす病気となり得ます。インフルエンザが重症化した場合に引き起こされる代表的な合併症が、「インフルエンザ肺炎」です。これは、インフルエンザウイルス自体が肺で直接炎症を起こす場合と、インフルエンザによって気道の防御機能が低下したところに、肺炎球菌などの細菌が二次的に感染して起こる場合があります。特に高齢者では、この二次性細菌性肺炎が重症化しやすく、入院治療や人工呼吸器管理が必要となることも少なくありません。また、小児において最も警戒すべき合併症が「インフルエンザ脳症」です。これは、インフルエンザウイルスに対する体の免疫反応が、脳に対して過剰に作用してしまうことで、急激な意識障害やけいれん、異常行動などを引き起こす、極めて重篤な状態です。発症すると、命を落としたり、重い後遺症が残ったりする可能性が高い、非常に恐ろしい合併症です。インフルエンザワクチンの接種は、これらの重篤な合併症の発症リスクを、統計的に有意に低下させることが、国内外の数多くの研究によって証明されています。例えば、高齢者におけるワクチン接種は、インフルエンザによる死亡リスクを大幅に減少させることが知られています。また、小児におけるインフルエンザ脳症の発症予防にも、ワクチンの有効性が示されています。たとえワクチンを接種しても、ウイルスに感染し、発症してしまうことはあります。しかし、その場合でも、ワクチンによって準備された免疫が、ウイルスの増殖を初期段階で食い止め、肺炎や脳症といった、より深刻な病態へと進行するのを防いでくれるのです。つまり、「発症しても症状が軽く済む」ということは、「命や健康な未来を守る」という、計り知れないほど大きなメリットに直結しているのです。