私が自分の体の変化に気づいたのは、中学二年生の夏でした。体育の授業の後、着替えをしていると、クラスの男子が「なんか変な臭いしない?」と騒ぎ始めたのです。その時は自分のことだとは思いませんでしたが、家に帰って制服のブラウスを脱いだ瞬間、脇の下からツンとした、今までかいだことのない臭いがするのに気づきました。それが、これから長く続くであろう、私とワキガの臭いとの闘いの始まりでした。それからの日々は、まさに悪夢でした。自分の臭いが常に気になり、授業中に腕を上げるのも、満員電車で人の近くに立つのも恐怖でした。友達と話していても、「今、臭いと思われていないだろうか」ということばかりが頭をよぎり、会話に集中できません。ドラッグストアで買える限りの制汗剤を試し、一日に何度もスプレーをしましたが、汗と混じって余計にひどい臭いになるだけでした。お風呂では、ナイロンタオルで脇の下をゴシゴシと、皮膚が赤くなるまで洗い続けました。でも、どんなに清潔にしても、汗をかくとあの臭いはすぐに蘇ってくるのです。いつしか私は、人と距離を置くようになり、すっかり内向的になってしまいました。転機が訪れたのは、高校生の時でした。見かねた母が、皮膚科へ連れて行ってくれたのです。そこで私は初めて、ワキガが体質であり、正しいケアの方法があることを知りました。医師は、ゴシゴシ洗いが逆効果であること、殺菌成分の入った石鹸で優しく洗うこと、そして清潔な肌に医療用の制汗剤を使うことなどを丁寧に教えてくれました。その日から、私は自分の体と正しく向き合うことを決意しました。正しいケアを続けるうちに、臭いはかなりコントロールできるようになり、私の心も少しずつ軽くなっていきました。ワキガは、私の体の一部です。完全になくなることはないかもしれません。でも、今はもう、臭いに人生を支配されることはありません。正しい知識とケアが、私に自信を取り戻させてくれたのです。
私がワキガの臭いと向き合った日々の記憶