風邪をひいた後、熱や鼻水は治まったのに、なぜか咳だけがいつまでも続いている。特に、痰の絡まない乾いた咳が、昼夜を問わずコンコンと出て、一度出始めると止まらなくなる。そんな経験はありませんか。そのしつこい咳の正体は、もしかしたらマイコプラズマ肺炎かもしれません。大人がかかるマイコプラズマ肺炎の最大の特徴は、この「頑固で乾いた咳」にあります。一般的な風邪や気管支炎であれば、咳は徐々に湿ったものに変わり、快方に向かうことが多いですが、マイコプラズマ肺炎の場合は、気管や気管支の粘膜に病原体がしつこく留まり、炎症を引き起こし続けるため、乾いた咳が三週間、四週間、あるいはそれ以上も続くことがあります。夜間や早朝に咳き込んで目が覚めてしまったり、会話中や電話中に咳が止まらなくなってしまったりと、日常生活に大きな支障をきたします。咳があまりに激しいため、胸や背中の筋肉が痛くなることもあります。この咳と対照的に、他の症状は比較的軽い場合があるのが、この病気の診断を難しくしている点です。発熱も、高熱が出る人もいれば、微熱がだらだらと続く人、あるいはほとんど熱が出ない人もいます。そのため、本人も周囲も「咳が長引いているだけ」と軽く考えがちです。しかし、体内では肺炎が起きているのです。レントゲンを撮っても、肺炎の影がはっきりと映らないことも多く、「非定型肺炎」と呼ばれる所以です。見分けるポイントとしては、市販の風邪薬や咳止めがほとんど効かない、という点が挙げられます。また、自分だけでなく、家族や職場の同僚など、身近な人にも同じように長引く咳の症状が出ている場合は、集団感染の可能性があり、マイコプラズマ肺炎を強く疑うべきサインと言えます。もし、あなたの咳がただの風邪のなごりにしてはあまりにしつこいと感じるなら、それは体が発している重要な警告かもしれません。一度、呼吸器を専門とする医師に相談してみてください。