お尻のかゆみが、なかなか治らずに続いたり、特徴的な広がり方をしたりする場合、それは単純なかぶれや湿疹ではなく、カビや寄生虫といった、病原体による「感染症」の可能性があります。これらの感染症は、それぞれ治療法が全く異なるため、自己判断で市販薬を使うとかえって悪化させる危険性があり、専門医による正確な診断が不可欠です。まず、女性に最も関係が深いのが、前述の「皮膚カンジダ症」です。カンジダはカビの一種で、陰部から肛門周囲、そしてお尻の割れ目にかけて、境界が比較的はっきりした赤い発疹と、その周りに小さな膿疱や皮むけが散らばるのが特徴です。強いかゆみを伴います。この場合は、「婦人科」または「皮膚科」が専門となります。次に、男性に多いイメージがありますが、女性でも発症するのが「いんきんたむし」、医学的には「股部白癬(こぶはくせん)」です。これは、水虫と同じ白癬菌というカビが、股間や内もも、お尻の皮膚に感染する病気です。症状は、半円状や輪のような形に、赤く盛り上がった発疹が広がり、その縁の部分が特に活動的で、かゆみが非常に強いのが特徴です。診断と治療は「皮膚科」が専門で、顕微鏡検査で白癬菌を確認した上で、抗真菌薬の塗り薬で治療します。ステロイドの塗り薬を使うと、一時的にかゆみは治まりますが、カビの増殖を助長してしまい、症状を悪化させるため、自己判断での使用は絶対に避けてください。そして、非常に稀ではありますが、特に小さなお子さんがいる家庭で考えられるのが「ぎょう虫症」です。ぎょう虫という寄生虫が腸に寄生し、夜間にメスが肛門の周りに出てきて産卵するため、夜になると、肛門周囲に耐え難いほどの強いかゆみが起こるのが最大の特徴です。この場合は、「内科」や「小児科」、「皮膚科」などで相談し、セロハンテープを使った簡単な検査で虫卵の有無を確認し、駆虫薬の内服で治療します。このように、感染症が原因のかゆみは、原因微生物を特定することが治療の第一歩です。特徴的な皮疹やかゆみの時間帯に気づいたら、専門医に相談してください。