ヘルパンギーナは、ほとんどの場合、自然に治る予後良好な病気ですが、ごく稀に、重篤な合併症を引き起こすことがあります。典型的な経過から外れ、いつもと違う危険なサインが見られた場合には、直ちに医療機関を受診する必要があります。保護者の方は、どのような症状に注意すべきかを知っておくことが大切です。まず、最も頻度が高く、注意すべきなのが「脱水症」です。喉の激痛のために水分が全く摂れず、「半日以上おしっこが出ていない」「口の中や唇がカサカサに乾いている」「泣いても涙が出ない」「ぐったりして活気がない」といった症状が見られた場合は、点滴による水分補給が必要なため、すぐに病院へ連れて行きましょう。次に、症状の経過です。通常、ヘルパンギーナの高熱は2~3日で下がります。もし、4日以上たっても38.5度以上の高熱が続く場合は、別の感染症を合併している可能性や、他の病気の可能性を考える必要があります。そして、最も警戒すべきが、ウイルスが中枢神経系に影響を及ぼす合併症、「無菌性髄膜炎」や「急性脳炎」です。これらの病気を疑うべき危険なサインは、「激しい頭痛」と「繰り返す嘔吐」です。特に、噴水のように勢いよく吐く場合は要注意です。また、「呼びかけへの反応が鈍い、意識がもうろうとしている」「首の後ろが硬くなり、前に曲げようとすると痛がる(項部硬直)」「原因不明のけいれんを起こした」といった症状は、極めて危険な兆候です。これらの神経症状が一つでも見られた場合は、夜間や休日であっても、ためらわずに救急病院を受診してください。ごく稀ですが、心臓の筋肉に炎症が起こる「心筋炎」を合併することもあります。「顔色が悪く、唇が紫色になっている」「呼吸が速く、苦しそう」といった症状は、循環器系の異常を示唆しており、こちらも緊急の対応が必要です。ヘルパンギーナの経過観察中、「何かがおかしい」という保護者の直感は、しばしば正しいことがあります。少しでも不安な点があれば、自己判断で様子を見続けず、かかりつけ医に相談するか、救急外来を受診する勇気を持つことが、子どもの命と健康を守るために何よりも重要です。
喉の痛みが治らない時の危険なサイン