お尻の皮膚に、ニキビのような赤いブツブツができて、かゆみや、時には痛みを伴う。多くの女性が経験するこの「お尻ニキビ」ですが、その正体の多くは、顔にできる思春期ニキビとは少し異なり、「毛嚢炎(もうのうえん)」、または「毛包炎(もうほうえん)」と呼ばれる皮膚の感染症です。この場合、治療の専門となる診療科は「皮膚科」です。毛嚢炎は、毛穴の奥にある、毛根を包んでいる「毛包」という部分に、細菌が入り込んで炎症を起こす病気です。主な原因菌は、私たちの皮膚に普段から存在する常在菌である「黄色ブドウ球菌」です。お尻は、長時間座っていることで椅子との間で圧迫され、汗や皮脂がたまって蒸れやすい部位です。また、下着による摩擦も絶えず加わります。このような高温多湿で、刺激の多い環境は、皮膚のバリア機能を低下させ、毛穴から細菌が侵入しやすくなる、まさに毛嚢炎にとって好都合な条件が揃っているのです。特に、夏場や、通気性の悪い下着(ガードルや化学繊維のタイツなど)を長時間着用していると、発症しやすくなります。症状は、毛穴に一致した赤いブツブツとして現れ、中心に小さな膿の点(膿疱)が見られることもあります。通常はかゆみを伴い、炎症が強いと、押すと痛むこともあります。これを自分で潰してしまうと、細菌が周囲に広がり、症状が悪化したり、色素沈着やクレーターのような跡が残ってしまったりする原因になるため、絶対に避けるべきです。皮膚科では、視診で毛嚢炎の診断を下します。治療は、主に「抗生物質」が用いられます。症状が軽い場合は、抗生物質を含む塗り薬(外用薬)が処方されます。広範囲に広がっていたり、炎症が強かったりする場合には、抗生物質の内服薬が必要となることもあります。日常生活での予防策も非常に重要です。通気性と吸湿性に優れた綿素材の下着を選び、締め付けの強い衣類は避けるようにしましょう。汗をかいたら、こまめにシャワーを浴びたり、ウェットシートで拭き取ったりして、お尻を清潔で乾いた状態に保つことが、再発を防ぐための鍵となります。