病気というのは往々にして、平日の昼間ではなく、夜間や週末といった医療機関が手薄な時間帯に牙を剥くものです。特に、腎盂腎炎の初期症状は非常に劇的で、夕食後に突然ガクガクと体が震えるような悪寒(戦慄)が始まり、その後1、2時間のうちに体温が40度近くまで跳ね上がることも珍しくありません。これに激しい腰痛や背中の痛みが加わった場合、翌朝まで待つべきか、それとも救急外来を受診すべきかという判断に迷うことでしょう。結論から言えば、震えを伴うほどの高熱と強い腰痛がある場合は、一刻も早く救急指定病院を受診すべきです。なぜなら、腎盂腎炎は急速に「敗血症ショック」へと進行する恐れがあるからです。敗血症とは、腎臓で増殖した細菌が血液中に入り込み、全身を巡って多臓器不全を引き起こす状態で、致死率も決して低くありません。夜間の救急外来では、必ずしも泌尿器科の専門医が当直しているとは限りませんが、当直の医師によって血液検査、尿検査、点滴治療が開始されることは、重症化を防ぐための極めて重要な第一歩となります。受診の際には、解熱剤を飲む前に体温を記録し、これまでに膀胱炎のような症状がなかったか、血尿は出ていないかといった情報を医師に正確に伝えてください。また、意識が朦朧としていないか、呼吸が速くなっていないかといった全身状態の変化も重要な指標となります。水分が全く摂れず、尿の量も減っている場合は、重度の脱水状態にある可能性が高く、即座の点滴による水分補給が不可欠です。救急外来で応急処置を受けた後は、翌日の診療時間に必ず泌尿器科の再診を受けることが鉄則です。応急処置で一度熱が下がったとしても、それは一時的なものであり、専門医による詳細な画像診断や長期的な抗生剤のプランニングがなければ、すぐに再発や悪化を招くことになります。夜間に一人で震えと痛みに耐えるのは精神的にも肉体的にも過酷なことです。無理をして我慢するのではなく、♯7119などの救急電話相談を活用したり、近くの救急病院へ連絡をしたりして、適切な助言を受ける勇気を持ってください。「ただの風邪かもしれないから」という遠慮が、取り返しのつかない結果を招くこともあるのが腎盂腎炎の怖さです。救急受診を一つの正当な医療アクセスとして捉え、腎臓というかけがえのない臓器を守るための迅速な行動を心がけましょう。
夜間に急激な悪寒と腰痛に襲われた際の腎盂腎炎の救急受診ガイド