小学校に通う7歳の女児Aさんが、急激な発熱と喉の痛みを主訴に来院しました。前日の夕方から元気がなく、夜間には39度2分の発熱を認め、翌朝には「喉が痛くてパンが食べられない」と訴えるようになりました。診察室でAさんの喉を確認したところ、咽頭全体が鮮紅色に充血しており、咽頭後壁には多数の赤いぶつぶつ、すなわちリンパ濾胞の腫脹が顕著に観察されました。また、左右の扁桃腺は著明に肥大し、その表面には点状の出血斑と一部に偽膜状の白い付着物が認められました。さらに詳しく口腔内を観察すると、舌の表面に典型的な変化が現れていました。発症から2日目ということもあり、舌の表面の白い苔が剥がれ落ち、その下から赤く腫れ上がった乳頭がブツブツと浮き上がるイチゴ舌の状態を呈していたのです。これはA群β溶血性連鎖球菌感染症に極めて特徴的な所見であり、迅速検査を行う前から溶連菌感染を強く示唆するものでした。実際に喉の拭い液を用いた迅速抗原検査を実施したところ、数分で明らかな陽性反応が確認されました。身体所見では、首の付け根にある頸部リンパ節が親指ほどの大きさに腫れており、触れると強い痛みを伴っていました。また、胸部から腹部にかけては、日焼けのような細かい赤い発疹が広がり始めており、猩紅熱への進展も確認されました。Aさんには、第一選択薬であるアモキシシリンという抗菌薬を10日間処方し、自宅での安静と十分な水分補給を指示しました。治療開始から2日後、再診時のAさんの熱は平熱に戻り、喉の痛みも大幅に改善していました。しかし、喉の奥の赤いぶつぶつはまだ完全には消失しておらず、舌の赤みも残っている状態でした。これは、細菌が死滅し始めていても、毒素によって引き起こされた組織の炎症が完全に引くまでには数日のタイムラグがあるためです。今回の症例で重要だったのは、保護者が「喉のぶつぶつ」と「イチゴ舌」という目に見える変化に早期に気づき、迅速に受診させたことです。溶連菌は早期に治療を開始すれば予後は極めて良好ですが、放置すれば周囲への感染源となり、本人も重症化する恐れがあります。Aさんの事例は、典型的な溶連菌感染症の経過を辿っており、保護者への丁寧な服薬指導とともに、学校保健安全法に基づき、抗菌薬服用開始後24時間を経過して全身状態が改善するまでの出席停止措置がとられました。喉のぶつぶつは、単なる風邪の一症状ではなく、全身を駆け巡る細菌感染の氷山の一角であることを、本症例の鮮明な所見は改めて物語っています。
喉の奥の赤いぶつぶつを診察した7歳児の症例とイチゴ舌の観察報告