40代や50代を過ぎてから、それまでは何ともなかったのに急にかかとが痛いと感じるようになる人が増えています。この年代特有のかかとが痛い原因として、足底筋膜炎と並んで重要なのが、かかとの脂肪体、すなわちファットパッドの萎縮です。かかとの骨のすぐ下には、衝撃を吸収するための特殊な脂肪組織が詰まった袋が存在しています。この組織は、地面から受ける強い衝撃を和らげる天然のクッションとしての役割を果たしていますが、加齢とともに脂肪の柔軟性が失われたり、組織そのものが薄くなったりすることで、その衝撃吸収能力が著しく低下します。これが脂肪体症候群と呼ばれる状態で、特にかかとの中央部や周辺を押すと、骨に直接触れるような硬い感触とともに痛みを感じるのが特徴です。中高年になると基礎代謝が落ち、体重が増えやすくなる一方で、このクッション材は目減りしていくため、かかとの骨にかかる圧力は若い頃よりも格段に増大します。このことが、歩くたびにかかとが痛いという慢性的な不快感を生み出すのです。また、更年期による女性ホルモンの減少も、腱や筋膜の弾力性を失わせ、痛みを助長する一因となります。脂肪体の減少は一度起きてしまうと劇的に増やすことは難しいため、対策としては外部からクッションを補うことが極めて有効になります。柔らかいシリコン製のかかと用ジェルパッドを靴の中に敷いたり、かかとをしっかりホールドする厚底の靴を選んだりすることで、不足した自身のクッション機能を代行させることが可能です。また、家の中での過ごし方にも注意が必要です。フローリングなどの硬い床の上を素足で歩くことは、薄くなった脂肪体にとって過酷な刺激となります。室内でも厚手の靴下を履くか、衝撃を吸収する室内履きを常用することを強くお勧めします。かかとが痛い原因が加齢に伴う組織の変化であるならば、それを補完する知恵を持つことが、長く歩き続けるための秘訣です。筋力トレーニングで足首周りの安定性を高めることも、かかとにかかる不安定な揺れを抑え、痛みの軽減に寄与します。自分の身体の変化を嘆くのではなく、現在の身体の状態に合わせて道具や環境を最適化していく柔軟な姿勢こそが、中高年以降の快適な生活を支える力となります。かかとが痛いという悩みを通して、自分の足をより深く理解し、適切な手入れを行うことで、再び歩く喜びを存分に味わえるようになるはずです。
中高年に多いかかとが痛い原因と脂肪体の減少による衝撃吸収能力の低下