あれは30代半ばの夏のことでした。最初は少し体がだるく、軽い頭痛がする程度だったので、冷房による夏風邪だろうと軽く考えていました。ところが、その日の夕方から突然ガクガクと震えるほどの激しい悪寒に襲われ、体温を測ると一気に39度まで上がっていたのです。慌てて近所の内科へ駆け込みましたが、その時点では喉の赤みも少なく、風邪薬と解熱剤を処方されて帰宅しました。しかし、夜が更けるにつれて状況は悪化しました。解熱剤を飲んでも熱は下がらず、それどころか右側の腰のあたりが、今まで経験したことのないようなズキズキとした激痛に変わり始めたのです。一睡もできずに朝を迎え、這うようにして別の大きな病院の泌尿器科を訪ねました。尿検査の結果、白血球と細菌が大量に検出され、超音波検査では右側の腎臓が腫れていることが確認されました。医師から告げられた診断名は「急性腎盂腎炎」でした。ただの風邪だと思っていたものが、実は腎臓にまで細菌が入り込んでいたという事実に、私は言葉を失いました。炎症反応を示すCRPの値も異常に高く、即入院となりました。入院生活は、24時間絶え間ない抗生剤の点滴から始まりました。絶食ではありませんでしたが、高熱と腰の痛み、そして薬の影響による吐き気で、食事どころか水を飲むことさえ苦痛でした。看護師さんに背中をトントンと叩かれるたびに、患部に電気が走るような痛みが響き、自分の体がこれほどまでに脆くなっていることに恐怖を感じました。入院して3日目、ようやく熱が下がり始め、腰の痛みも和らいできましたが、細菌を完全に死滅させるためにはさらに4日間の入院が必要でした。医師からは、以前から自覚していた軽い膀胱炎の症状を放置していたことが、細菌が尿管を遡って腎臓に到達した原因だと言われました。もっと早く泌尿器科を受診していれば、これほどの苦痛を味わうことはなかったのかもしれません。退院後、私は自分の体のサインを二度と無視しないと誓いました。特に女性にとって、腎盂腎炎は決して他人事ではありません。ただの風邪や腰痛だと思っていても、その裏に恐ろしい感染症が隠れていることがあるのです。もし、高熱とともに背中に違和感があるなら、迷わずに泌尿器科の専門医に診てもらうべきです。あの1週間の入院体験は、私の健康に対する意識を根本から変える、痛みに満ちた、しかし貴重な教訓となりました。