水疱瘡は子どもの病気と思われがちですが、大人が感染すると子どもよりもはるかに重症化しやすいという特徴があります。38度を超える高熱が1週間近く続いたり、発疹が全身に隙間なく広がったりするだけでなく、水痘肺炎や脳炎といった命に関わる合併症を引き起こすリスクも高まります。そのため、大人の水疱瘡治療においては、より強力かつ効率的な薬物療法が求められます。現代の治療で主流となっているのが、バラシクロビルという抗ウイルス薬です。この薬は、前述のアシクロビルを改良したもので、体内に吸収された後に代謝されてアシクロビルに変化する「プロドラッグ」と呼ばれるタイプの薬です。バラシクロビルの最大の利点は、アシクロビルに比べて腸管からの吸収率が劇的に改善されている点にあります。同じ量のアシクロビルを直接飲むよりも、バラシクロビルとして服用するほうが血中の有効成分濃度を高く保つことができ、ウイルスに対する攻撃力も強くなります。また、吸収が良い分、服用回数を減らすことができるのも患者にとっては大きなメリットです。アシクロビルが1日に5回もの服用を必要とするのに対し、バラシクロビルは通常1日3回の服用で済みます。これにより、忙しい大人の日常生活の中でも飲み忘れを防ぎ、安定した治療効果を得ることが可能になります。大人の場合、周囲に感染を広げないための隔離期間が長引くことは社会的な損失も大きいため、この薬によって発疹の乾燥を早め、ウイルス排出期間を短縮することは極めて重要です。治療を開始する際は、やはり発疹の出現から早ければ早いほど効果的です。大人の場合、発疹が出る前に全身の倦怠感や筋肉痛といった前駆症状が現れることが多いため、少しでも疑わしいと感じたらすぐに内科や皮膚科を受診すべきです。また、すでに家族に水疱瘡の患者がいる場合は、自分が未感染であれば潜伏期間を考慮して予防的に動くことも検討に値します。もし、バラシクロビルを服用しても高熱が下がらない、咳や呼吸困難が出る、激しい頭痛や意識障害があるといった場合には、入院による点滴治療が必要になることもあります。大人の水疱瘡は決して侮れません。最新の抗ウイルス薬を味方につけ、迅速に対処することが、重症化の連鎖を断ち切り、後遺症なく社会復帰するための鍵となります。薬の進歩によって、かつては恐れられていた大人の水疱瘡も、正しく恐れ、正しく治療すれば、乗り越えられる病気となっているのです。
大人の水疱瘡に効く飲み薬バラシクロビルの利点と重症化予防