30代後半のある冬の朝、私は自分の体に起きた異変に気づきました。目が覚めて布団から出ようとしたとき、両手の指がまるでおもちゃのブロックのように固まっていて、うまく曲げることができなかったのです。痛みというよりは、指の関節の中に重たい粘土が詰まっているような、独特の不快感でした。最初は「昨日の家事で手を使いすぎたかな」とか「寝相が悪くて手が冷えたのかも」と軽く考えていました。しかし、この症状は翌日も、その次の日も続きました。不思議なことに、起きてから1時間ほど家事をしたり、お湯で手を温めたりしているうちに、指はスムーズに動くようになります。この「朝だけ動かしにくい」という特徴が、関節リウマチの典型的な初期症状である「朝のこわばり」だとは、当時の私は知る由もありませんでした。それから1ヶ月ほど経つと、こわばりに加えて、はっきりとした痛みが現れ始めました。特に右手の人差し指と中指の付け根が赤く腫れ、ペンを握ったり箸を使ったりする動作が苦痛になってきました。さらに、疲れやすさが異常でした。夜にしっかり寝ているはずなのに、昼間から全身に鉛が入ったような倦怠感があり、微熱が続くこともありました。近所の整形外科を受診したところ、最初は「腱鞘炎」という診断で湿布を処方されました。しかし、湿布を貼っても痛みは引かず、逆に左手の首や足の指の付け根にも痛みが広がっていきました。この「左右対称に痛む」という感覚に恐怖を覚え、私は自分でインターネットで症状を調べ始めました。そこで辿り着いたのが関節リウマチという病名でした。すぐに膠原病内科の専門医を探し、精密検査を受けました。血液検査の結果、リウマチ因子と抗CCP抗体が陽性で、炎症反応も高値を示していました。医師から「関節リウマチです」と告げられたときは、ショックで目の前が真っ暗になりましたが、同時に「あの原因不明の苦しさの正体がようやく分かった」という安堵感もありました。初期段階で専門医に辿り着けたことは、私のその後の人生にとって最大の幸運でした。リウマチは早期に治療を開始すれば、関節の破壊を食い止め、以前と変わらない生活を送ることができる「寛解」を目指せる病気だからです。もしあの時、ただの疲れだと放置していたら、今頃私の指は変形し、歩くことさえままならなかったかもしれません。朝のわずかなこわばり。それは私の体が発していた、一生を左右する切実なサインでした。
朝の指のこわばりから始まった私の関節リウマチ闘病記